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大樹

幼い頃から僕は 樹 が大好きだった。

本当に精神的にいっぱいっぱいだった 10代 20代 ・・

家を出てからも精神的に安定することはなかった。

当時はどこにも何にも生きるきっかけをみつけれられず、ひたすらに暗闇のトンネルを手探りで這い回っていた記憶しかない。。

そう、あれはまさしく地獄だった。

社会との接点をどこにも持てずに、弱い、どうしようもなく弱すぎる自分に嫌気がさし、しんどすぎるこの人生の時間消化に嫌気がさし、気がついたら夜中に外へ出て、ベランダから下を見下ろしていた。駅の線路のむこう側に、吸い込まれそうになっていた・・・・・

もう何もかもがギリギリの状態だったのだ。

***

人間とは、人の世、社会と接点が持てない状況が続くと、人間以外の生き物に敏感になってくる瞬間がある。

そんな時、大学近くの「欅の大木」になぜか心ひかれ、夜中にギターを背負い、その木のそばで世を明かすことが増えていった。

「樹は本当にすごいなぁ」

当時の僕の生き物としての憧れと支えが、この 欅の『大樹』だった。

***

彼らはたとえ自分自身がどうなろうと、芽吹いた場所、根付いた場所で全てを受け入れ、

上へ上へとひたすらに伸びようと懸命に生きる。

途中で何者かに切り倒されようが、台風や雷でへし折られようが、何の迷いもなく、自分はそこでひたすらに生き、生を全うする・・

そんな彼らの堂々とした生き様にひかれて、いつしか「大樹」が、

僕の人生のテーマであり目標となっていった。

これは僕が大樹をテーマに大作を描き続け、絵筆を置くまでの始まりの作品である。

この作品をきっかけに「大樹」をテーマに取り憑かれたかのように大作を描き続けた時期に突入することになる。

描き溜めた作品を世に披露するため、最初で最後の個展を渋谷PARCO横の小さなギャラリーでさせて頂いたのを最後に、僕は絵筆を置いた。

やりきった。

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ここからが僕の人生の本当の始まりだった。

やっと動き出した新たな僕の人生。

自分自身で殻を破り、そこを出ていく決意を固めるまでは、その先の宇宙はずっと閉ざされたままだ。

行き詰まった状況は、誰かがいつかどうにかしてくれるということは決してありえない。

名残惜しさを命の炎と共に燃やしつくして、その先に行ってみようじゃないか。

そこにはまだ見ぬ何かが待っている。

そんなワクワクという自分時間を、自分自身で続けていく限り、

人生というものは永遠に終わらないものなのだと、今も変わらず そう思っている。

農園主